
新しい企画を考えても、過去の成功例を少し変えただけになってしまう。会議でアイデアを求められても、いつも同じような案しか浮かばない。そんな悩みを解決するヒントになるのが、アナロジー思考です。
アナロジー思考とは、異なる物事の間に共通する構造や関係性を見つけ、すでに知っていることを別の課題に応用する考え方です。
重要なのは、見た目が似ているものを探すことではありません。異なる分野にある「問題の仕組み」や「うまくいく理由」を見つけ出し、自分の仕事に応用できる形に置き換えることです。
当記事では、アナロジー思考の意味やメタファーとの違い、ビジネスでの具体例、実践するための4ステップ、思考力を鍛える7つのトレーニングを紹介します。
当記事を読み終えたときには、目の前の課題を別の分野から考え直し、アイデアを生み出すための具体的な手順がわかるはずです。
アナロジー思考とは?
意味をわかりやすく解説
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アナロジー思考とは、ある物事の構造や関係性を、別の物事に当てはめて考える思考法です。日本語では「類推」や「類比」と表現されます。
たとえば、ある会社で「新入社員が仕事の進め方を覚えるまでに時間がかかる」という問題が起きているとします。
同じ業界の研修制度だけを調べるのではなく、スポーツのコーチングや料理人の修業方法に目を向けてみます。
スポーツでは、初心者に完成形だけを見せるのではなく、動作を分解し、練習とフィードバックを繰り返すことがあります。料理の修業でも、基本動作を身につけてから、徐々に複雑な仕事を任される場合があります。
そこから、仕事の習得にも「手順を細分化する」「実践する」「具体的なフィードバックを受ける」という仕組みが応用できないか、と考えるわけです。
スポーツや料理と社員教育は、表面的には別の世界です。しかし、初心者が技能を身につける過程には、共通する構造があります。
様々な共通点を見つけ、仕事に応用することがアナロジー思考です。
アナロジー思考のポイントは
「構造」を見抜くこと
アナロジー思考を理解するうえで押さえたいのが、表面的な類似と構造的な類似の違いです。
たとえば、次の2つを比べてみましょう。
- 表面的な類似: オンライン会議とテレビ番組は、画面越しに人が話す点で似ている。
- 構造的な類似: オンライン会議とテレビ番組は、話し手・聞き手・情報の流れ・注意を引く仕組みという点で比較できる。
後者では、単に見た目が似ているかではなく、情報がどのように伝わり、受け手がどう反応するかに注目しています。
類似する視点を使えば、テレビ番組の進行方法から、会議で発言が偏らないための工夫を考えられるかもしれません。たとえば、議題を事前に共有する、進行役が発言の順番を設計する、最後に論点を整理する、といった方法です。
もちろん、テレビ番組と会議は目的も制約も異なります。番組の演出をそのまま会議に移せばよいわけではありません。借りるべきなのは、目的に合った仕組みです。
アナロジー思考では、異なる物事から共通する構造を取り出し、必要な部分だけを応用することが重要です。
アナロジー思考とメタファー思考の違い
アナロジー思考と混同されやすい言葉に「メタファー」があります。どちらも異なる物事を結びつけますが、注目するポイントが異なります。
| 比較項目 | アナロジー思考 | メタファー(隠喩) |
|---|---|---|
| 主な目的 | 既知の仕組みを別の課題に応用する | ある物事を別の物事になぞらえて表現する |
| 注目点 | 構造、関係性、仕組み | 共通する特徴やイメージ |
| 使い方 | 問題解決、仮説づくり、企画立案 | 説明、表現、理解の促進 |
| 例 | 顧客対応を「交通整理」にたとえ、情報の流れを設計する | 「この会社は家族のような組織だ」と表現する |
たとえば「会社は船のようなものだ」という表現は、組織のイメージを伝えるメタファーとして使えます。
一方で、船の航行から「目的地を決める」「進路を確認する」「状況に応じて航路を修正する」という仕組みを取り出し、事業計画やチーム運営に応用するなら、アナロジー思考として活用できます。
ただし、両者は完全に別々のものではありません。メタファーがアナロジー思考のきっかけになることもあります。大切なのは言葉の分類そのものより、たとえたあとに、何を理解し、何に応用するのかです。
アナロジー思考がビジネスで
役立つ3つの理由
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アナロジー思考は、アイデアを生み出す場面だけでなく、問題の整理や他者への説明にも活用できます。ただし、使えば必ず成果が上がるというものではありません。では、どのような場面で役立つ可能性があるのか。まずは整理します。
1. 既存の発想から抜け出し、
新しいアイデアを考えられる
企画を考えるとき、同じ業界の競合だけを参考にしていると、似たような施策に行き着くことがあります。
同じ轍を踏まないために、あえて別の業界や日常生活に目を向けます。
たとえば、店舗への来店頻度を高めたいとき、他社店舗のポイント制度だけでなく、図書館の予約・貸し出しの仕組みを参考にする方法が考えられます。
図書館から着想を得るなら、次のような問いを立てられます。
- 顧客が次に利用する理由を、どのようにつくっているのか。
- 利用者が必要なものを見つけやすくするには、何を整理すべきか。
- 次の利用につながる情報を、どのタイミングで伝えればよいか。
立てた問いから、来店後に関連商品や次回イベントを案内する仕組みなどを考えられます。
あくまで仮想例であり、図書館の仕組みを取り入れれば来店頻度が上がると実証されているわけではありません。重要なのは、普段の競合分析とは異なる角度から仮説をつくれることです。
2. 問題の本質を整理し、
解決策の候補を増やせる
目の前の問題を、その業界特有の問題だと思い込むと、解決策も限られがちです。
たとえば、営業担当者が顧客への提案内容をなかなか決められない場合、「営業資料を改善する」「商品知識の研修を増やす」といった案が出るかもしれません。
別の分野にある「選択肢が多すぎて決められない問題」を探してみます。
レストランのメニュー選びや、旅行先を決める場面にも、候補が多い、判断基準が曖昧、比較に時間がかかる、といった共通構造があります。
共通構造を営業の課題に当てはめると、商品知識を増やすだけでなく、顧客の課題別に提案候補を絞る、比較基準を明確にする、最初に確認すべき質問を用意する、といった改善案を検討できます。
このように、問題を別の分野の言葉で捉え直すことで、解決策の候補を広げられます。
3. 複雑な仕組みを、
相手に伝わる形で説明できる
アナロジー思考は、自分で考えるためだけのものではありません。難しい仕組みを相手に理解してもらうときにも役立ちます。
たとえば、新しい業務システムを導入する際、機能の一覧を説明するだけでは、利用者が何のために使うのかをイメージしにくい場合があります。
そこで、「情報を探すための社内図書館」「仕事の受け渡しを整理する受付窓口」のような身近な仕組みを使って説明します。
相手がすでに知っている仕組みを足場にすることで、新しい仕組みの役割を理解しやすくなる可能性があります。
ただし、たとえは理解を助ける一方、実際には存在しない機能まであるように誤解させることもあります。説明の最後には、たとえと現実の仕組みがどこまで対応しているのかを明確にすることが大切です。
アナロジー思考の具体例3選
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ここからは、アナロジー思考を実際の仕事で使うイメージをつかむために、3つの仮想例を紹介します。いずれも実在企業の成功事例ではなく、考え方を説明するための例です。
具体例1:他業界の仕組みから
顧客対応の改善を考える
課題: 問い合わせが増えると、担当者によって対応の質や回答までの時間にばらつきが出る。
最初に思いつくのは、人員を増やす、マニュアルを追加する、研修を行うといった方法かもしれません。
気づきから、病院の受付や交通整理の仕組みに目を向けます。
受付では、来訪者の目的を確認し、必要な窓口に案内します。交通整理では、すべての車を同じ場所に流すのではなく、進行方向や優先順位に応じて流れを分けます。
うまく機能している仕組みを、顧客対応に応用できないか考えます。
| 参考にする仕組み | 抽象化できる構造 | 顧客対応への応用案 |
|---|---|---|
| 受付窓口 | 用件を確認して担当先につなぐ | 問い合わせの種類を最初に分類する |
| 交通整理 | 流れを分け、混雑を避ける | 緊急度や対応内容で振り分ける |
| 案内表示 | 次に何をすべきかを示す | 顧客に必要な手順を明示する |
ここで借りているのは、病院や道路の設備そのものではありません。「入口で情報を整理し、適切な行き先に流す」という構造です。
ただし、顧客対応には個人情報や緊急性、担当者の専門性などの条件があります。単純な振り分けだけでは対応できない問い合わせもあるため、例外処理や人による確認も設計する必要があります。
具体例2:自然界の仕組みから
チームの情報共有を考える
課題: チーム内で情報が一部のメンバーに偏り、担当者が不在になると仕事が止まってしまう。
の課題を考えるとき、自然界にある「情報や資源の受け渡し」に注目してみます。
たとえば、生態系では複数の生物や環境要素が関係し合っています。ただし、自然界の仕組みをそのまま組織に当てはめることはできません。あくまで「一つの要素だけに依存しない仕組みを考える」という発想の手がかりとして使います。
発送から、チーム運営について次の問いを立てます。
- 仕事の情報が一人に集中していないか。
- 担当者が不在でも、必要な情報にたどり着けるか。
- 情報を受け取る側が、次に何をすればよいかわかるか。
具体的な改善案としては、案件の進捗を共有する場所を決める、対応履歴を記録する、引き継ぎ時の確認項目を統一するといった方法が考えられます。
取り上げた例で重要なのは、自然界と会社が同じだと主張することではありません。自然界を手がかりに、情報の集中や依存という問題を捉え直し、現実の組織に合う対策を考えることです。
具体例3:料理のレシピから
業務の標準化を考える
課題: 同じ仕事をしているのに、担当者によって成果物の品質にばらつきがある。
料理のレシピには、材料、分量、手順、加熱時間など、結果を左右する要素が整理されています。経験や感覚も大切ですが、一定の品質を再現するには、手順や条件を共有することが役立ちます。
今回の構造を業務に応用するなら、次のように考えられます。
- 成果物の品質を左右する要素を洗い出す。
- 経験者が暗黙に行っている判断を言語化する。
- 手順や確認項目を整理する。
- 実際に使ってみて、例外や不足を修正する。
たとえば、営業提案書の作成であれば、顧客の課題、提案の根拠、費用、導入後の流れ、想定される質問などを確認項目にできます。
ただし、料理と業務では、状況の変化や個別対応の必要性が異なります。レシピのようにすべてを固定すると、かえって柔軟性が失われる仕事もあります。
したがって、標準化する部分と、担当者が状況に応じて判断する部分を分けることがポイントです。
アナロジー思考を実践する
4つのステップ
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アナロジー思考は、ひらめきだけに頼る必要はありません。次の4ステップに分けると、仕事の中でも試しやすくなります。
ステップ1:解決したい
課題を具体的にする
最初に、何を改善したいのかを明確にします。
「売上を上げたい」「チームをよくしたい」「新しいアイデアがほしい」といった表現だけでは、考える範囲が広すぎます。
たとえば「売上を上げたい」という課題なら、次のように具体化できます。
- 問い合わせから商談につながる割合を改善したい。
- 初回購入後に再購入する顧客を増やしたい。
- 提案書の作成にかかる時間を減らしたい。
課題が具体的になるほど、別の分野から何を借りればよいかを考えやすくなります。
ステップ2:別の分野から
似た構造を持つものを探す
課題を整理したら、同じ業界の事例だけでなく、別の分野にも目を向けます。
たとえば、初回購入後の再購入を増やしたいなら、顧客が次の行動を起こすきっかけを設計しているサービスを探せます。
候補は、図書館の貸し出し案内、習い事の進級制度、定期点検の通知、旅行の予約後に届く案内などです。
ポイントは、最初から「これが正解だ」と決めないことです。複数の候補を出し、それぞれから借りられる仕組みを探します。
ステップ3:共通する
構造を言葉にする
候補が見つかったら、何が共通しているのかを抽象化します。
たとえば、習い事の進級制度と顧客の再購入を比べる場合、表面的にはまったく異なるものです。しかし、次のような構造を取り出せます。
- 次に目指す目標がある。
- 次の行動に進む条件がわかる。
- 続けることで得られる価値が見える。
今回気づいた構造を顧客との関係に応用するなら、購入後に使い方を案内する、次に役立つ商品を紹介する、利用状況に応じた情報を提供する、といった仮説を立てられます。
抽象化とは、具体的な事例から、別の場面でも使える特徴や関係性を取り出すことです。
ステップ4:自分の課題に
当てはめ小さく検証する
最後に、抽象化した構造を自分の仕事に当てはめます。
ただし、似た構造があるからといって、同じ結果が得られるとは限りません。対象となる顧客、費用、業務の制約、実行する人の能力などが違うためです。
そのため、いきなり大規模に導入するのではなく、小さな範囲で試し、結果を確認します。
たとえば、購入後の案内を改善するなら、対象となる顧客や期間を限定し、案内を見た人の行動や問い合わせ内容などを確認します。結果が想定と異なれば、仮説や方法を修正します。
アナロジー思考は、別の分野の仕組みを正解として移植する方法ではありません。新しい仮説をつくり、検証するための方法です。
アナロジー思考を鍛える
7つのトレーニング
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アナロジー思考を身につけるには、普段から異なる物事の共通点を探し、見つけた構造を別の場面に応用する練習が役立ちます。
以下では、仕事中や日常生活で取り組める7つのトレーニングを紹介します。最初から優れたアイデアを出そうとする必要はありません。「何と何が似ているのか」「どの部分なら応用できそうか」を考えることから始めましょう。
トレーニング1:身近な道具の仕組みを
別の仕事に応用する

身の回りにある道具を一つ選び、その機能や仕組みを仕事に応用できないか考えます。
たとえば、付箋を題材にしてみましょう。
付箋には、情報を小さく分けられる、移動できる、並べ替えられる、不要になれば外せる、といった特徴があります。
気づけた特徴を仕事に当てはめると、次のような発想ができます。
- 大きな企画を小さな検討項目に分ける。
- 会議で出た意見を分類して並べ替える。
- 決定前の案を、確定事項と区別して管理する。
付箋そのものを仕事に導入することだけが目的ではありません。「情報を小さく分け、並べ替え、必要に応じて変更できる」という構造を見つけることが練習になります。
練習問題: はさみ、地図、タイマー、傘のうち一つを選び、その仕組みを仕事の改善に応用する案を3つ考えてみてください。
トレーニング2:職場の問題を
別の業界の問題に置き換える

自分の職場で起きている問題を一つ選び、別の業界にも似た問題がないか考えます。
たとえば「問い合わせ対応が滞る」という問題なら、病院の受付、ホテルのフロント、空港の案内、物流センターの仕分けなどを比較対象にできます。
次の順番で考えてみましょう。
- 自分の職場で何が起きているかを一文で書く。
- 別の業界で似た問題が起きる場面を探す。
- 両者に共通する原因や関係性を整理する。
- 自分の職場で試せる改善案を考える。
たとえば、共通点が「依頼の種類を見分けずに、すべて同じ流れで処理していること」なら、受付時の分類や優先順位づけが改善案になるかもしれません。
練習問題: 「会議で意見が出ない」「新人が育たない」「仕事の引き継ぎがうまくいかない」のうち一つを選び、別業界の仕組みから解決のヒントを探してください。
トレーニング3:自然界の特徴から
仕組みを抽象化する

自然界の生き物や現象を観察し、そこにある仕組みを人間の活動に応用できないか考えます。
たとえば、植物の成長を題材にするなら、いきなり「会社も植物と同じだ」と考えるのではなく、成長に必要な条件に注目します。
水、光、温度など、成長を左右する条件があるという点から、人材育成にも「本人の努力だけでなく、成長を支える環境やフィードバックが必要ではないか」と問いを立てられます。
立てた問いから、学ぶ時間を確保する、相談できる相手を用意する、成果だけでなく過程にもフィードバックする、といった仮説が生まれます。
ただし、植物と人間は同じ仕組みで成長するわけではありません。自然界の例は答えそのものではなく、考えるための手がかりとして使います。
練習問題: 植物、川、渡り鳥、蜂の巣などから一つ選び、その特徴をチーム運営や仕事の進め方に応用する案を考えてみてください。
トレーニング4:できるだけ
遠い分野から発想を借りる

似たもの同士を比較するのは簡単ですが、遠い分野から共通構造を見つけると、普段とは違う発想につながることがあります。
たとえば、社内の情報共有を改善したいとき、他社の情報共有ツールだけを調べるのではなく、駅の案内表示や料理のレシピ、図書館の分類方法などを参考にしてみます。
駅の案内表示からは、必要な情報を適切な場所に置く仕組みを考えられます。図書館の分類方法からは、情報を探しやすくする分類のルールを考えられます。
大切なのは、遠い分野から無理に共通点をひねり出すことではありません。共通する構造が見つからなければ、別の題材に切り替えて構いません。
練習問題: 「会議を短くする」という課題を、料理、スポーツ、旅行、図書館の4分野から考え、それぞれ一つずつ改善案を出してみましょう。
トレーニング5:成功例と失敗例を
比較し、違いを抽象化する

成功した事例だけを見ると、結果につながった要因を見誤ることがあります。成功例と失敗例を比較すると、どの条件が重要だったのかを考えるきっかけになります。
たとえば、社内研修について考えるなら、受講後に仕事で実践する機会がある研修と、受講して終わる研修を比較します。
比較するときは、単に「成功したからよい」「失敗したから悪い」と評価するのではなく、次の観点を整理します。
- 目的は明確だったか。
- 実践する機会があったか。
- 必要な支援が用意されていたか。
- 結果を確認し、改善する仕組みがあったか。
そのうえで、他の仕事にも応用できる構造を探します。
ただし、成功・失敗の原因を一つに決めつけないことが大切です。担当者の経験、予算、実施時期など、別の条件が結果に影響している可能性もあります。
練習問題: 自分の職場でうまくいった取り組みと、思うように進まなかった取り組みを一つずつ選び、共通点と違いを整理してください。
トレーニング6:
文学作品など創作物から
情報が食い違う状況を考える

アナロジー思考の題材として、文学作品を使う方法もあります。今回の例題に、芥川龍之介の短編小説『藪の中』を取り上げます。
『藪の中』は、複数の人物による証言などを通して、ある事件が異なる視点から語られる作品です。作品そのものを詳しく論じることが目的ではありません。今回のトレーニングでは、同じ出来事について情報が食い違う構造を、仕事上の問題に応用する練習として使います。
作品は青空文庫の『藪の中』で読むことができます。
練習の題材:プロジェクトの遅延
あるプロジェクトで、納期に遅れが出たとします。
- 営業担当者は「顧客からの要望変更が原因だ」と説明する。
- 開発担当者は「要件が最初から明確でなかった」と説明する。
- 管理者は「進捗報告が遅かった」と考えている。
それぞれの説明は、本人の立場から見れば正しい可能性があります。しかし、どれか一つの説明だけで原因を決めてしまうと、重要な情報を見落とすかもしれません。
小説『藪の中』の構造から着想を得て、次のように考えます。
1. それぞれの説明を分けて整理する
誰が、何を、どのように説明しているのかを書き出します。事実として確認できることと、本人の解釈や推測を区別します。
2. 食い違いが生じる理由を考える
担当者が持っている情報、見ている時間軸、役割、評価される基準が違うのかもしれません。
3. 共通して確認できる情報を探す
要件変更の記録、議事録、作業履歴、進捗報告の日時など、説明とは別に確認できる情報を集めます。
4. 次に必要な情報を決める
原因を決めつける前に、どの記録や関係者への確認が必要かを考えます。
今回の練習で応用しているのは、文学作品の筋書きではなく、複数の視点から同じ出来事が語られるという構造です。
なお、当課題にはアナロジー思考だけでなく、情報整理や批判的思考の要素も含まれます。作品から共通する構造を取り出し、現実の仕事の課題に当てはめることが、今回のアナロジー思考の練習です。
トレーニング7:思いついたアイデアを
別の場面でも使えるか検証する

最後は、考えたアイデアを別の状況に当てはめ、応用できる条件とできない条件を見極める練習です。
アナロジー思考では、似ている点を見つけるだけでなく、どこまで応用できるのかを確認することも欠かせません。
たとえば、料理のレシピから業務の標準化を考えた場合、繰り返し発生する定型作業には応用しやすいかもしれません。一方、顧客ごとに判断が大きく変わる仕事では、手順を固定しすぎると対応力が落ちる可能性があります。
そこで、次の3点を確認します。
- どの条件が同じなら、アイデアを応用できそうか。
- どの条件が違うと、応用が難しくなるか。
- 小さく試すなら、何を観察すればよいか。
練習問題: 今までのトレーニングで考えたアイデアを一つ選び、別の部署や別の業務でも使えるかを検討してください。使える場合と使えない場合の条件を、それぞれ書き出しましょう。
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使うときの3つの注意点
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アナロジー思考は、異なる分野から新しい発想を得るのに役立つ一方、使い方を誤ると、見当違いの結論につながることもあります。
1. 表面的な類似だけで、同じ結果になると考えない
二つの物事に似た点があっても、背景にある条件まで同じとは限りません。
たとえば、別の会社で成功した制度を自社に導入しても、組織の規模、顧客層、社員の経験、予算などが異なれば、同じ結果になるとは限りません。
比較するときは、似ている点だけでなく、異なる点も書き出しましょう。
2. たとえを事実や
証拠の代わりにしない
アナロジー思考から生まれるのは、主に仮説やアイデアです。
「自然界にこの仕組みがあるから、会社でも必ずうまくいく」「別の業界で成功しているから、自社でも成功する」と結論づけることはできません。
たとえによって問題を捉え直したら、現実の条件に照らして確認し、必要に応じてデータや関係者の意見を集めます。
3. 応用できる範囲を決め、小さく試す
他の分野から借りた仕組みは、使える部分と使えない部分があります。
そのため、最初から全社に導入するのではなく、一つの業務や小さなチームで試すなど、結果を確認できる範囲から始める方法があります。
想定どおりにいかなかった場合も、失敗で終わりではありません。どの条件が異なっていたのかを調べれば、次の仮説を立てる材料になります。
アナロジー思考の価値は、たとえを思いつくことだけではありません。そこから仮説をつくり、現実に合う形へ修正していくことにあります。
アナロジー思考を
さらに深く学びたい人へ
アナロジー思考について、構造や関係性を見抜く考え方をさらに学びたい場合は、細谷功氏の著書『アナロジー思考――「構造」と「関係性」を見抜く』も参考になります▼
≫ アナロジー思考: 「構造」と「関係性」を見抜く
\自頭を鍛えるヒントをチェックする/
本書は東洋経済新報社から刊行された思考法の書籍(オーディオブック化されている)で、アナロジーの仕組みや抽象化、ビジネスへの応用、思考力を鍛える方法などを扱っています。
当記事で紹介したトレーニングを実践しながら、より体系的に学びたい場合の参考資料の一つです。まずは身近な課題を一つ選び、別の分野から共通する構造を探す練習から始めてみてください。
アナロジー思考とは?
ビジネスの具体例と
鍛え方のまとめ
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アナロジー思考とは、異なる物事に共通する構造や関係性を見つけ、既知の仕組みを別の課題に応用する考え方です。
ビジネスでは、新しいアイデアを考える、問題を別の角度から整理する、複雑な仕組みをわかりやすく説明するといった場面で活用できます。
実践するときは、次の4ステップを意識しましょう。
- 解決したい課題を具体的にする。
- 別の分野から似た構造を探す。
- 共通する構造を言葉にする。
- 自分の課題に当てはめ、小さく検証する。
最初から遠い分野の意外な共通点を見つける必要はありません。身近な道具や日常の出来事から始め、少しずつ比較する範囲を広げていけばよいのです。
大切なのは、似ているものを見つけて満足するのではなく、何が共通していて、何が異なり、どこまで応用できるのかを考えることです。
今日、仕事で行き詰まっている課題があれば、一度その問題を別の業界や日常生活に置き換えてみてください。普段とは違う視点から、解決のヒントが見つかるかもしれません。